同再開発事業は、@土地の高度利用、土地利用転換による中枢的業務機能の導入A
淀屋橋・御堂筋界隈の活性化の起爆剤となるような商業施設の導入B風格ある淀屋橋
・御堂筋にふさわしい都市景観の形成の3つの理念を柱に進められる。
閉校となった愛日小学校跡地などの土地を利用して行われる同再開発事業は、地権者が輻
輳して大規模な再開発が難しいとされる御堂筋ではかなりのボリュームで行われる再開発事業。
特に低層部に導入が予定されるにぎわい施設である「場の創出、演出」が、夜間・休日のにぎわ
い不足が指摘されていた、淀屋橋・御堂筋エリアにどのような波及効果を生み出すのかが注目さ
れており、関係者は「高感度の商業施設を導入し、地区の活性化に貢献したい」と話す。
事業の施行者はUR都市機構、特定建築者に三井住友海上火災保険鰍ニ三井不動産鰍ェ
参画し、保険会社がこのビルに関西エリアの中核機能を導入するほか、三井不動産が東京など
、各地区での再開発ノウハウを生かしてにぎわい施設の演出を行う。
同再開事業は、大阪市とUR都市機構などが行う都市再生事業。



成功事例の積み上げ大事
      UR都市機構 渡部氏に聞く

事業の特徴・着目点は
「御堂筋・淀屋橋の一等地に、これだけのスケールで一体型の再開発ビルができるのがこの事業の大き
な特徴だ。都市再生緊急整備地域でもあり、特区の適用を受けて容積率が緩和され土地の高度利
用が可能になった。中枢業務機能の導入も予定されている。
しかし昨今、業務地区として発展を遂げてきた御堂筋の機能転換が求められているところから、このエリア
にふさわしい風格を兼ね備えつつ、にぎわいのある商業施設を新たに導入するなど、これからの御堂筋活性
化のモデルとなるような再開発をしたいと考えている」

にぎわい創出に向けてどう動く
「施行者である私たちと、特定建築者である三井住友海上火災梶A三井不動産鰍ニ連携しながら進め
ていくことになる。ビルの低層部では、1階・2階の空間を連続させ、ビルの周囲をとりまく形でストリート型の
複合空間を作り上げる。ポルティコと呼ばれる列柱で空間をつなぎ、開放的でありながら空間を上手く利
活用し、ゆとりある歩行者空間となるよう計画している。
セットバック等で生まれた従来型の空間活用は、植栽空間になるなど、にぎわいの創出に欠けていた部分
があったと思う。今回の計画では、魅力あるビル内の店舗が外向きに顔をだす形で計画されており、歩いて
楽しい空間にしたいと思っている。
ビルの地下では地下鉄淀屋橋駅と直結し、新しいまちとして注目されている淀屋橋WESTへの動線にも配
慮した計画となっている。」

起爆剤といっても、御堂筋を大きく変えていくには課題もあるのでは
「東京の丸の内などと違い、多くの地権者が存在する御堂筋やその周辺部について、大規模開発をしたり、
連鎖的に開発を行っていくことは難しい面がある。今回の再開発では、地権者が比較的少なく、同意形成
が図りやすかったことがある。
ただ、このエリアでの再開発が注目を集め成功を収めることになれば、周辺のビルのオーナーやデベロッパーも
これらの動きに連動してくることは十分に考えられる。大事なことは成功事例を積み上げること。そういう意味で
このビルが果たす役割は大きい。
御堂筋では国が行う夜間照明等の社会実験、沿道企業によるネットワークづくりなど新しい動きがでてきてい
る。都市機構としても、事業の立ち上げだけでなく、完成後も魅力あるビルとして長期にわたり賑わいが保てる
ような仕掛けづくりを行うことによって、御堂筋活性化の動きに大きな貢献を果たしたいと考えている」


周辺への連担考えたい
   三井不動産活髟モ大阪支店長

大阪のポテンシャルをどう見る
「弊社は、2002年に中之島三井ビルを竣工させたが、当時はバブル期の後遺症が大きく、大阪出身の企
業が次々と東京に本拠地を移すなど、東京一極集中が進み関西のマーケットは低迷していた。また、外資系
企業の進出先としてはやはり東京が優位である。しかし、関西、とりわけ大阪のポテンシャルは高く、オフィスビル
マーケットの重要度でも、依然上位ランクだ。特に梅田・中之島・御堂筋の3地区は需要が高い。
最近の東京の波動がこれから関西・大阪にも押し寄せてくると思っている。」

淀屋橋で大規模再開発を手掛ける
「御堂筋沿道において、これだけの規模で再開発できるのはめったにない機会なので魅力だ。
御堂筋側は大通りの景観を守りながら、高品質のオフィスビル、商業テナントを誘致したい。今橋通り、北浜
通り(1階・2階)には、ポルティコを設置し、にぎわいある空間を創出したいと思っている。このビルを単なるオフ
ィスビルとして考えるのではなく、まちづくりとして周辺部にどう連担させるかを考えたい」

にぎわいを、どう創出する
「足元が楽しいまちをつくりたい。またこのビルは、淀屋橋の地下通路に直結し、かつ新しいまちづくりとして注目
を集めている淀屋橋ウエストなど西側への動線を意識したつくりとなっている。低層部には、周辺のまちのトレン
ドと連動した感度の高い店を集積させたい。1階部分には、ダイレクトインのショップを、2階部分にはオープンテ
ラスも設け賑わいを外部に向かって演出したい。」

オフィスビルのトレンドが変わってきている
「最近の開発事例では、『そこで働く人にとって、心地よい空間とは何か』をコンセプトに企画している。オフィス
のみの単一機能ではなく、レストランや物販、美術館など複合的にビルを組み立てることに取り組んでおり、
景観との調和も重要テーマだ。
今までの街になかった「魅力的な機能」が備われば、来街者が増え、また、周辺地域との連係をはかることに
より回遊性が生まれ、その結果、街全体に人の流れができ街の活性化につながる。」

まちのにぎわいも、個店の集結によってにじみだす傾向がある
「まちの強さは、懐の深さにある。ビルの複合化と同じように、まちにも様々な複合化が求められる。それが懐
の深さになる。我々が開発を手掛ける東京・日本橋でも、表通りはオフィスやショップが立ち並ぶが、一歩裏
手に回れば人々をほっとさせるまちがあり、それがまちの魅力のひとつになっている。
高品質のものだけをそろえるのではなく、いろいろなステージで人の匂いを感じるまちにしていくことがまちづくりだ。
御堂筋は、グレードが高く、世界にも誇れるストリートだが、きれいなオフィス街として整備されすぎた感がある。
沿道にはブランド力のある店、裏手には親しみを感じるまちなど、多様性のあるまちになれば御堂筋周辺部の
まちが大きく変わっていくことは可能だ。築後30年以上経過したビルもたくさんあり、そろそろ大きな転換期では
ないか。
淀屋橋で手掛ける再開発事業は、まちのコンバージョンを図る上での先駆事例としたい」


御堂筋・淀屋橋の今後を考える
地権者「導く」TMOを

複合的機能により、まちの「しつらえ」を整えることが求められる御堂筋。今回特集した淀屋橋の再開発ビル
は、まちの大きな転換点となる可能性を持ったビルだ。
御堂筋とその周辺の現状は、一部にカフェなどの商業施設が入っているものの、依然、銀行などの金融系が
幅を利かす事実はさほど大きく変わっていない。民間の目はシビアだ。理念だけではまちは動かない。今回の
ような再開発を成功事例として積み上げることが、このエリアの機能転換に大きく影響してくると思われる。
しかしそれだけで十分かと言えば疑問も残る。大きな理由は、このエリアにおける、地権者・オーナーの数の多
さにある。東京の華々しい再開発は、デベロッパー自体が大きな「床」を有し、主体的に大規模再開発を進め
られる素地があるからだ。御堂筋周辺の再開発とはそこが大きく違う。
御堂筋のネットワーク組織は、ここまで沿道企業らによる任意団体などがあるが、再開発を大きく動かせる権
限は持ち合わせていない。大阪市も「民間のことだから」と理念は謳いながらも及び腰のところがある。
御堂筋沿道のビルは、老朽化したものもあり、近々、再開発意欲が民需で沸きあがる時期にあたる。この時
期に大阪市や都市再生機構などが入った、コーディネート機関を立ち上げる重要性を感じる。地権者らにネ
ットワーク化やノウハウに関して、「導く」スタンスや窓口が大阪市などの公的機関に求められているのではないか。